|第4回|市岡めぐみさん〈国民宿舎恵那山荘〉

麓とは別世界。Uターン後あらためて知った根の上の良さをもっと伝えていきたい。

恵那山荘市岡めぐみ
●市岡めぐみ 1982年生まれ、岐阜県中津川市出身。
滋賀県の大学を卒業後、京都で文化財保存に関わる企業に就職。
2011年、東日本大震災をきっかけに中津川にUターン。現在は、国民宿舎恵那山荘に勤務。

恵那の市街地から約30分、標高約900mに位置する根の上高原。

保古の湖と根の上湖の2つの湖が広がり、四季を通して植物やレジャーなどを楽しむことができる県立自然公園です。国民宿舎恵那山荘は、保古の湖の畔に佇む一軒宿。木々や風の音、自然の息づかいを感じながらのんびり自然体で過ごせる宿として、リピーターのファンも多いそう。

今回は、宿で主にフロントを担当している市岡めぐみさんにお話を伺ってきました。

根の上高原 保古の湖

―市岡さんとは1年くらいの付き合いですが、こうやってお話を聞くのって初めてでなんだか緊張しちゃいますね!こちらで働くようになったきっかけって、何だったんでしょう?

「滋賀の大学を卒業後、京都で就職していました。大学では考古学を専攻していたので、最初は文化財の保存修復に関わる会社の営業をしていたんです。あとは広告会社などでも働いていました。

地元から離れて仕事をする厳しさを感じていた時、東日本大震災がおきたこともあって、地元に帰ろうと決めました。恵那山荘に就職したのは、実家から近い場所で働きたいと思っていたので、ちょうどいいなと思って。それほど深い思いはなくって、とりあえず働こうっていう気持ちでした。」

―Uターンで戻ってきたんですね!こちらでは、毎日どんなお仕事を?

「主にフロント業務を担当しています。基本的には朝9時に出勤して、お客様の受付や、レジ締め、客室のセットと掃除、レストランのお手伝いなど電話応対を受けながらやっています。その合間に、イベントの企画だったり、写真を撮りに行ってブログを書いたり。やれることは何でもやります。」

―幅広い!日々の仕事の中でやりがいを感じる部分ってどんなところですか?

「サービス業なので、やっぱりお客さまの喜びがダイレクトに伝わってくることが、この仕事の楽しさですね。お客さまとは一期一会なので、本当にここに来てよかったと思っていただけるようにしていきたいと思っています。大学の専攻やこれまでの仕事とは全く違う職種ですが、一番自分に合っているんじゃないかと思っているんですよ。」

—逆に地元に帰ってきて、田舎ってやだなって思う事もあるんじゃないですか?(笑)

「うーん。世間が狭いというところですかねぇ。人付き合いが苦手というわけでは全然ないんですけど、出会った人が知り合いの知り合いだった、みたいなことがよくあってそれも面白いなぁと思うんですが、、、、ちょっと窮屈な感じがするときもありますね。みなさんもそうゆうことってあるんじゃないですか?(笑)」

―わかります!“田舎あるある”ですよね(笑)せっかくなので、根の上高原をちょこっと案内していただけますか?

「もちろんです!ご案内しますよ~」

根の上高原水芭蕉

恵那山荘から歩いてすぐのところにある水芭蕉の群生地。
この時は終わりかけでしたが、それでも美しく咲いていました。

根の上高原 恵那山荘
ショウジョウバカマがひょっこり。

根の上高原 恵那山荘

馬酔木と書いてアセビ。馬が葉を食べるとよろけてしまうことからこの名が付いたのだそう。
小さな花がとってもキュート!

湖の周りを案内いただいている間、市岡さんからは次々と植物の名前が飛び出します。

恵那山荘 市岡めぐみ

-市岡さん、元々植物に詳しいんですか?

「ここに来てからいろいろな植物を覚えました!もともと歴史好きということもあって、知らないことは知りたいと思うタイプんですよね。だから知らない植物を発見すると植物図鑑などで調べたり、近くにあるあかまんまロッジの赤尾さんに教わっています。」

根の上高原

—根の上って、こんなに素敵な場所だったんですね。

「私も働くようになって気付きました。
やっぱり麓とは、別世界なんですよね。緑に囲まれて、静かで、鳥の鳴き声や風の音が聞こえるって素敵じゃないですか?通勤路の山道も、季節ごとに表情を変えていきますし、街中のようなアスファルトの匂いではなく、土の匂いがするところがとっても好きです。まだまだ知らない植物もたくさんあるから飽きないところも気に入っています。」

—リフレッシュしにまた来ますね!
根の上高原に訪れてみたい!と思っている方に一言お願いします。

「 “何もない”が売りの場所です。そのかわりに、街や住宅地にはない自然や鳥などがたくさんいます。のんびり、リラックスしにぜひお越しください。」

国民宿舎恵那山荘HP:http://enasansou.net/
根の上高原HP:http://tao.enat.jp/

「地元の人たちがこんなに近い場所に素晴らしい別世界がある、ということを知らない人がまだまだいると思うので、もっと伝えていきたいです。」と目をキラキラさせてお話ししてくださった市岡さん。
“何もないが売り”というのは単なるキャッチフレーズで、ここ根の上高原には素敵な人と素晴らしい自然がありました。

インタビュー:良雪邦恵・園原麻友実
文章:良雪邦恵
写真・編集:園原麻友実